鶏糞は園芸店やホームセンターでよく見かける肥料ですが、実は多くの人が上手に使えていないのが現状です。鶏糞には意外な効果や注意点があり、上手に活用すれば植物の成長を大きく促進させることができます。
今回は、鶏糞の特徴や正しい使い方、炭化させた場合の活用法など、初心者でも理解しやすいよう詳しく解説していきます。
鶏糞の特徴と成分
鶏糞は、主要3要素のバランスが良い肥料です。また、微量要素も豊富に含まれています。つまり、鶏糞一つでほとんどの栄養を植物に供給できるといえるでしょう。ただし、与えすぎるとアルカリ分が強くなりすぎることと、匂いも強いのが特徴です。
鶏糞のメリット
1つ目は、栄養分がとにかく豊富なこと。2つ目は、とにかく安いことです。
まず、栄養分の豊富さについて。鶏糞は他の有機肥料に比べて圧倒的に肥料分が高く、バランスも理想的になっています。窒素(N)が3.5%、リン酸(P)が6%、カリウム(K)が2.5%と、主要3要素のバランスが良い肥料です。しかもカルシウムやマグネシウムなどの微量要素も豊富に含まれています。このような完ぺきな肥料成分を持つ素材はほかにありません。
そしてもう一つの大きな利点が、とにかく安いということです。鶏は日本で大量に生産されており、卵の国内消費も高いため、鶏糞の供給量も豊富です。そのため、運搬コストが圧倒的に安く、非常に低コストな肥料となっているのです。
鶏糞の注意点
匂い
未発酵の鶏糞は強い臭いがあり、近隣への配慮が必要です。完全発酵させたものやペレット状の物、後述する「炭化鶏糞」を使うと臭いが抑えられます。
肥料焼け
鶏糞を入れ過ぎると「肥料焼け」を引き起こす可能性があります。これは、鶏糞に含まれる窒素成分が原因で起こる問題です。
鶏糞の窒素は主に尿酸や尿素の形態で存在しています。土壌の中で微生物によってこれらが分解されると、アンモニアや亜硝酸ガスが発生します。同時に、微生物の急激な繁殖によって発酵熱も生み出されます。
これらのガスと熱は、植物の根に直接ダメージを与え、いわゆる「肥料焼け」を引き起こすのです。肥料焼けが起きると、葉が枯れ上がったり、根が傷んでしまうため、植物の生育が著しく阻害されてしまいます。最悪の場合、植物が枯死してしまうこともあります。
アルカリ化
鶏糞を入れ過ぎてしまった場合の2つ目のデメリットは、「土壌がアルカリ化する」ことです。
鶏糞には、鶏が餌として摂取する炭酸カルシウムや、殺菌のための石灰が含まれているため、アルカリ性が強いのが特徴です。この高アルカリ性の鶏糞を大量に土に混ぜ込むと、土壌のpHが上昇し、アルカリ化してしまうのです。
アルカリ性の土壌では、ミネラルが溶け出しにくくなるため、植物に必要不可欠な微量要素が不足しやすくなります。結果として、植物の生育不良や栄養失調を引き起こす可能性があります。適量の使用や、酸性資材の混合など、土壌pHの管理が重要となります。
鶏糞の種類
鶏糞には主に4つの種類があります。
まず1つ目が「発酵鶏糞」です。ホームセンターなどで安価に販売されている一般的な鶏糞です。発酵と謳っていますが完熟していないものがほとんどです。
2つ目は「鶏糞ペレット」。発酵させた鶏糞を高温で加熱して乾燥させペレット状にしたものです。成分が安定しており、扱いやすいのが特徴です。
3つ目は「鶏糞粉末」。さらに細かく粉砕したものです。分解が早く、すぐに効果が発揮されるのが利点です。
4つ目は「炭化鶏糞」です。高温で鶏糞を炭化させた肥料です。化学肥料のように即効性がありますが、効果が切れるのも早いです。
鶏糞の使い方と注意点
バケツ1杯(約10L)に対して、牛糞1L、油かす50g程度を混ぜ合わせます。この比率が一般的な野菜の元肥としてよく使われる配合です。
畝を作る予定の場所に、この混ぜ合わせた肥料を均等に撒き、鍬で10~15cm程度の深さに混ぜます。この作業で、肥料が適切な深さに入り込みます。鶏糞の分解には2、3週間ほどかかるので、十分な時間的余裕を持って行うことが大切です。
追肥する場合は、畝の縁から約20cm離れた位置に溝を作り、その中に鶏糞を20g程度施すと良いでしょう。この際にも、周りの土を寄せ付けて十分に被せることで、悪臭の発生を抑えることができます。
土壌酸度を測定してアルカリ性が強かった場合は石灰やバーク堆肥などの酸性資材を投入して中和すると良いでしょう。
このように、鶏糞は適量さえ分かれば、非常に優れた肥料となりますが、使い過ぎにはご注意ください。
鶏糞の適切な保存方法と保管期間
保存方法
- 乾燥:鶏糞を保存する前に、十分に乾燥させることが重要です。乾燥は、病原体の増殖と悪臭の発生を防ぎます。直射日光の当たる通気性の良い場所で、鶏糞を薄く広げて乾燥させましょう。
- 通気性の良い保管場所:乾燥した鶏糞は、通気性の良い場所に保管します。湿度が高いと品質が低下するため、湿気を避け、風通しの良い場所を選びましょう。
- 害虫対策:保管中の鶏糞は、害虫の被害に遭いやすいため、適切な対策が必要です。保管場所を定期的に清掃し、密閉できる容器を使用することで、害虫の侵入を防ぎましょう。
保存期間
適切に乾燥・保管された鶏糞は、1年以上の長期保存が可能です。ただし、保管状況によっては品質が徐々に低下していくため、できるだけ早期に使用することをおすすめします。また、保管状態を定期的にチェックし、湿気や害虫の被害がないか確認することが重要です。
炭化させた鶏糞の活用法
先ほど述べた鶏糞の欠点を解消するために、注目されているのが「炭化鶏糞」です。これは、鶏糞を高温で炭化させたものです。
炭化することで、匂いがほとんどなくなり、アルカリ性も和らぎます。さらに、窒素(2.5%)、リン酸(8.4%)、カリウム(4.9%)の主要3要素の含有量も高まり、より効果的に植物の生育を促進できます。
炭化鶏糞は、そのままプランターや家庭菜園の土に混ぜ込むだけで簡単に使えます。匂いも気にせず、アルカリ化も気にすることなく、手軽に活用できるのが魅力です。
炭化鶏糞を自分で作る方法
ペール缶などに発酵鶏糞を入れ、真ん中に煙突になるような鉄管をさします。底から薪などで熱して、灰になる前に火を止めます。時間は2時間程度です。冷めたら完成です。
参考:100円のスーパー肥料❝鶏糞❞を炭化で肥料成分爆上げ微生物爆増≪炭化鶏糞≫の作り方
鶏糞を炭化することで、窒素成分はほとんど変わりませんが、リン酸は2倍、カリウムは1.3倍と大幅に増加します。さらに、pH値も9と適度な アルカリ性を示すため、酸性の土壌を中和する効果も期待できます。
加えて、炭化によって病原菌も殺菌されるため、安全性も高まります。また、土壌の通気性が改善されるなど、植物の根の張りが良くなり、収量や味の向上も期待できるそうです。
市販されている鶏糞製品の選び方
市販されている鶏糞製品には様々な種類があり、品質も異なります。高品質な鶏糞製品を選ぶためのポイントは以下の通りです。
製造方法
鶏糞の製造方法は重要です。発酵や乾燥など、適切な処理がなされた製品を選びましょう。製造工程が詳細に公開されているメーカーの製品が安心です。
成分表示
製品の成分表示を確認し、栄養成分の含有量が高いものを選びます。化学肥料や添加物のない製品がおすすめです。
用途と特徴
鶏糞製品にはさまざまな用途、容量があります。園芸用、農業用、家庭用など、目的に合った製品を選びましょう。
信頼できるブランド
メーカーや販売店の信頼性も重要です。評判の良いブランドの製品を選ぶと安心して使えます。ネット購入ならば口コミなどで評判を確認してから購入しましょう。
にわとり研究所
ほなみ赤鶏の発酵完熟鶏ふん15kg × 1袋
しっかり発酵させた完熟たい肥だから、従来の鶏ふんと比較して
匂いも少なく、さらさらで使用しやすい!
鶏糞に関するFAQ
-
鶏糞はどのような野菜に適していますか?
-
鶏糞は窒素、リン、カリウムなどの豊富な栄養素を含んでいるため、ほとんどの野菜に適しています。特に成長期の野菜や果樹などが良好に反応します。しかし、酸性を好む植物には適さない場合があるため、使用前にpHレベルを確認することが重要です。
-
生の鶏糞と加工済み鶏糞の違いは何ですか?
-
生の鶏糞は栄養価が高く即効性がありますが、病原体や雑草の種が含まれるリスクがあり、直接植物に使用する前に堆肥化などの処理が必要です。一方、加工済み鶏糞(乾燥やペレット化されたもの)は使用が容易で安全性が高いですが、処理の過程で栄養価が若干低下する可能性があります。
-
鶏糞を使う最適な時期はいつですか?
-
鶏糞は、植物の成長期に最も効果を発揮します。一般的に、春の植え付け前や成長期の初めに施肥すると良いでしょう。また、秋には、来年の成長のために土壌を改良する目的で使用することができます。
-
鶏糞の施肥後、水やりはどのように行うべきですか?
-
鶏糞を施肥した後は、栄養素が植物により良く吸収されるように、十分な水やりが重要です。特に乾燥またはペレット形式の鶏糞を使用した場合は、水でしっかりと土壌を湿らせることで、鶏糞から栄養素が効率よく溶出し、植物が利用しやすくなります。しかし、過剰な水やりは根腐れの原因となるため、土壌が乾燥している時に適量を与えることが大切です。
まとめ
鶏糞は、安価で高栄養な有機肥料ですが、匂いやアルカリ性の強さから、初心者には扱いづらい面もあります。
しかし、適切な使い方を知っていれば、とても効果的な肥料となります。さらに、炭化させた単粒鶏糞を活用すれば、これらの課題も解消でき、より手軽に活用できます。
野菜づくりや園芸、ガーデニングを始めたい人は、ぜひ鶏糞の魅力を発見してみてください。