鶏糞は有機質肥料として知られ、安価で、化学肥料のような即効性もあり、土壌改良効果も期待できます。しかし、市販の鶏糞は完熟していないため、追肥として使用するのは難しい場合があります。しかし、適切な発酵処理を行えば、高品質な完熟鶏糞を自作することができます。

本記事では、市販の鶏糞から完熟鶏糞を作る簡単な方法をご紹介します。

完全発酵した鶏糞の特徴

  • 発酵が進むと悪臭が減少し、土の香りに近づく
  • 色が暗褐色から黒褐色に変化
  • 細かく粒状になり、土のような質感になる
  • 発酵が進むと温度が下がり、周囲の温度に近づく

完全発酵のメリット

  • 肥料成分が安定化し、植物に吸収されやすくなる
  • 悪臭が減少し、取り扱いが容易になる
  • 病原菌や雑草の種が死滅するため、衛生的で安全

以上のように、鶏糞の完全発酵とは、発酵が十分に進み、肥料成分が安定化し、悪臭が減少した状態を指します。この状態の鶏糞堆肥は、植物の健全な生育に最適な有機質肥料となります。

鶏糞を完全発酵させるには?

発酵の条件

発酵には適切な水分と通気性が重要です。水分は50-60%が理想的で、定期的に水を加えて調整する必要があります。また、発酵を促進するために、10%程度の米ぬかを混ぜると良いでしょう。

発酵の管理

発酵が進むにつれて温度が上がるので、温度の変化に合わせて水分を調整します。発酵が進むと徐々に温度が下がるので、必要に応じて水を加えましょう。

発酵期間

完全に発酵するまでには3〜6ヶ月ほどかかります。発酵が進むにつれて、鶏糞の色が濃くなり、土の様な香りになってきます。切り返しを行わない場合、完全発酵には数年かかることもあるそうです。

pHレベルの管理も重要

未発酵の鶏糞のpHは8~9と高アルカリ性ですが、完熟鶏糞は8程度に下がります。とはいってもやや高いので、石灰と一緒に使うと土壌がさらにアルカリ性に傾くため注意が必要です。

発酵の手順

1.米糠を混ぜる

鶏糞に対して約10%の割合で米糠を混ぜ合わせます。これにより、発酵に必要な炭素源が供給されます。

2.水分調整

鶏糞と米糠の混合物は、握って固まるが押すと簡単に崩れる程度の水分量が適切です。水分が多すぎると好気性発酵に必要な空気が足りなくなるため、注意が必要です。雨水や川の水など、塩素が含まれていない水を使うのがよいでしょう。

3.温度管理

発酵が進むと温度が上がってきますが、寒い季節は温度上昇が難しい場合があります。温度計や温度データロガーを使って温度を確認し、必要に応じて加温するなどして、適切な温度(50-60度)を維持することが重要です。発酵初期は高温になりますが、徐々に温度が下がり、最終的には20〜30度程度になります。

4.撹拌と水分補給

温度が上がってきたら、定期的に良く混ぜ合わせます。水分が不足してきたら適量の水を加えて、水分を適切に保ちます。

5.完熟の確認

温度が上がってきて、やがて下がっていき、最終的に上がらなり、臭いも減少したら発酵が完了したと判断できます。この時点で完熟した鶏糞堆肥が出来上がります。

完全に発酵すると、鶏糞の粒子が細かくなり、土の質感に近くなります。

完熟鶏糞堆肥の特徴と活用

完熟した鶏糞堆肥は、肥効が高く即効性があるため、化学肥料と同様の使い方ができます。

成分含有量やpH値も適切に調整されているので、様々な作物に利用できます。

生の鶏糞や未熟な堆肥は直接土に混ぜると、ガスの発生により植物の根を傷める可能性があるため注意が必要です。

完熟した鶏糞堆肥は、土に混ぜて栽培を開始するのに適しています。一方、土に混ぜずに表面に置くだけの場合や、しばらく栽培しない場合は、生の鶏糞や未熟な堆肥でも問題ありません。

鶏糞堆肥の活用例

鶏糞堆肥は、様々な作物の栽培に活用されています。特に、野菜や果樹、花などの園芸作物に適しています。

例えば、トマトやナス、キュウリなどの野菜では、鶏糞堆肥を施すことで収量や品質の向上が期待できます。また、りんごやぶどうなどの果樹にも良い効果があります。

さらに、稲作や麦類、大豆などの畑作物でも、鶏糞堆肥は有機質肥料として利用されています。土壌の改善と作物の生育促進に効果的です。

このように、鶏糞堆肥は幅広い作物の栽培に活用されており、化学肥料に頼らない持続可能な農業に貢献しています。適切な発酵管理と施用方法を理解することで、より効果的な活用が期待できます。

未熟な鶏糞を追肥で畑に混ぜてはいけない理由

根焼けや発芽障害のリスク

鶏糞の炭素率が低いため、土壌に混ぜると根焼けや発芽障害が生じる可能性があり、作物の初期生育を阻害してしまいます。

窒素飢餓の発生

一方、炭素率の高い米ぬかを一緒に混ぜても、一時的に窒素飢餓の状態になり、作物の初期生育が不十分になってしまいます。

病原菌の増殖

土壌中に病原菌が存在する場合、未熟な有機物は病原菌の餌となり、思うように作物が生育しない恐れがあります。

一方で、土壌表面に散布する場合は、作物の根が直接触れることがないため、上記のような問題は生じません。

つまり、未熟な鶏糞を土壌に混ぜるのは避けるべきですが、追肥として表面に散布するのであれば問題ありません。ただし、作物の生育状況を注意深く観察し、適切なタイミングで散布することが重要です。