近年、気候変動の影響により、夏場の高温がトマト栽培の大きな課題となっています。
高温によって、トマトの生育が阻害され、収量や品質の低下が深刻な問題となっています。本記事では、トマトの高温障害の症状と、効果的な対策について詳しく解説します。
トマトの高温障害とは
トマトは高温に弱く、特に35℃以上の高温が続くと、様々な障害が発生します。代表的な症状には以下のようなものがあります
着花・着果不良
高温が続くと、トマトの花粉がダメージを受けて受粉しづらくなります。その結果、着花や着果が不良になり、収量の大幅な減少につながります。
尻腐れ(生理障害)
高温で蒸散が促進されると、果実への水分や栄養分の流入が少なくなります。その結果、果実の花落ちの部分がカルシウム不足で黒く変色する尻腐れが発生し、品質が低下します。
裂果
高温で果実の肥大が促進される一方、果皮の成長が追いつかず裂けてしまいます。見た目の品質が著しく損なわれます。
軟化玉
高温によって果実が軟らかくなり、傷みやすくなります。
生育停止
高温ストレスで植物の生長が止まってしまうことがあります。
病害虫の多発
高温によりタバココナジラミの発生地域が拡大する可能性があり、病害虫の発生リスクが高まります。
これらの障害が起こると、収量の大幅な減少につながるため、高温対策は非常に重要です。
高温対策の基本
トマトの高温障害を防ぐには、以下のような対策が効果的です:
1. 遮光・遮熱ネットの設置
路地栽培のトマトでも、高温による生育障害が問題となります。遮光ネットを設置することで、直射日光を遮り、ハウス同様に気温上昇を抑えることができます。
路地での遮光ネットの設置方法
- 支柱を立て、その上部にネットを張る
- 支柱の高さは、トマトの生育ステージに合わせて調整する
- ネットの端部は、しっかりと固定する
- 通気性を確保するため、ネットと地面の間に隙間を設ける
また、ネットの設置位置も重要です。
- 南側に設置すると、午前中の日射を遮ることができる
- 東西両側に設置すると、午前・午後の日射を遮ることができる
このように、遮光ネットの設置位置や高さを工夫することで、高温対策として効果的に活用できます。
2. 通風の確保
高温障害を防ぐには、通風の確保も非常に重要です。通風を確保することで、以下のような効果が期待できます
- 気温上昇の抑制
- 葉温の低下
- 蒸散作用の促進による葉の冷却
- 湿度上昇の抑制
通風を確保することで、高温ストレスを和らげ、トマトの生育と果実品質を改善する効果があります。
路地での通風対策
路地栽培では、以下のような方法で通風を確保することができます
- 支柱の設置間隔を広くする
- 株間を広くする
- 枝葉の剪定を適切に行う
- 遮光ネットを設置する際は、地面との隙間を設ける
支柱の設置間隔や株間を広くすることで、葉の重なりが少なくなり、通風性が高まります。さらに、適切な剪定によって葉の密集を防ぐことも、通風確保に効果的です。
3. 水分管理
トマトは高温条件下では蒸散作用が活発になるため、土壌水分の確保が重要になります。土壌水分が不足すると、葉の萎れや生育不良、果実の品質低下などの高温障害が起こりやすくなります。
適切な灌水管理
- 深根性を促すため、十分な量の灌水を行う
- 土壌表面が乾燥しないよう、こまめな灌水が必要
- 土壌水分センサーなどを活用し、適切な水分状態を維持する
マルチングの活用
- 土壌表面をマルチングすることで、蒸発を抑制し土壌水分を保持できる
- 稲わらや黒色マルチなどを使用すると効果的
- マルチングにより、根域の温度上昇も抑えられる
根域の冷却
- 地表面への散水や地下灌水により、根域の温度上昇を抑える
- 根の活性を維持し、蒸散作用を促進する
4. 品種選択
高温耐性品種の特徴
- 高温下でも良好な果実品質を維持できる品種
- 高温ストレスに強く、生育が安定する品種
- 日焼けや裂果などの高温障害に強い品種
主な高温耐性品種
品種選択のポイント
- 地域の気候条件に合わせて、高温耐性の高い品種を選択する
- 早期収穫や晩生性など、生育特性も考慮する
5. 養分管理
- 高温条件下では、トマトの生育が阻害され、養分吸収が低下する可能性があります。
- そのため、適切な養分管理を行うことで、トマトの生育を安定させ、高温障害を軽減することができます。
主な養分管理対策
1. 窒素管理
- 高温下では、窒素過剰が生育を抑制し、高温障害を助長する可能性があります。
- 適度な窒素施肥量を心がけ、過剰にならないよう注意が必要です。
2. カルシウム管理
- カルシウムは細胞壁の強化に重要な役割を果たします。
- 高温下では、カルシウムの吸収が阻害されるため、葉面散布などによる補給が有効です。
- これにより、果実の日焼けや裂果などの高温障害を軽減できます。
3. リン酸管理
- リン酸は根の発達を促し、ストレス耐性を高める効果があります。
- 高温下では、リン酸の吸収が低下するため、適切な施肥が重要です。
4. カリウム管理
- カリウムは気孔の開閉調節に関与し、ストレス耐性を高めます。
- 高温下では、カリウムの吸収が阻害されるため、適切な施肥が必要です。
総合的な養分管理
- 上記の各養分を適切に管理し、バランスの取れた養分状態を維持することが重要です。
- 土壌分析や葉色診断などを活用し、状況に応じた施肥管理を行うことが効果的です。
以上のように、路地トマトの高温障害対策には、適切な養分管理が重要な役割を果たします。窒素、カルシウム、リン酸、カリウムなどの各養分を適切に管理し、バランスの取れた養分状態を維持することが、高温障害の軽減につながります。
まとめ
高温障害への対策には、単一の方法ではなく、状況に応じて組み合わせて実施することが重要です。また、気候変動の影響により、今後さらに高温化が進むことが予想されるため、長期的な視点で対策を検討する必要があります。