鶏の健康と卵の質を向上させたい――そんな思いから、発酵飼料(はっこうしりょう)作りに挑戦する養鶏家や家庭菜園家が増えています。

発酵飼料は、米ぬかやおから、木材チップなど身近な材料を使い、微生物の力で発酵させて作る自然派の飼料です。

発酵によって消化吸収が良くなり、鶏の腸内環境も整うため、健康的な卵や肉の生産につながります。

本記事では、実際の作り方や材料の選び方、発酵のコツ、管理方法、失敗しないポイントまで、初心者にも分かりやすく解説します。

これから発酵飼料を始めたい方、より良い自家製飼料を目指したい方に役立つ情報をお届けします。

材料選びと配合の基本

発酵飼料作りの第一歩は、適切な材料選びとバランスの良い配合です。

主な材料は以下の通りです。

  • 米ぬか(こめぬか):発酵の主役となる微生物のエサで、栄養価も高い
  • おから:たんぱく質源。豆腐屋さんから入手可能
  • 籾殻(もみがら):飼料に繊維質を加え、発酵のバランスを取る
  • くず米や雑穀:消化しやすさを調整
  • 牡蠣殻石灰(かきがらせっかい):カルシウム補給
  • 塩:ミネラル補給と発酵の安定化
  • 腐葉土(ふようど):多様な微生物を供給
  • 木材チップやおがくず:水分調整や発酵促進

配合比率は、おから:米ぬか:籾殻:くず米:牡蠣殻石灰:塩=3:4〜6:1:2:0.3:0.1が目安です。

材料の水分量や鶏の状態に応じて微調整しましょう。

特におからの水分が多い場合は、米ぬかやおがくずで調整します。

手で握って固まりにならず、ボロボロと崩れる程度が適度な水分量です。

発酵飼料の作り方と発酵のコツ

材料を揃えたら、いよいよ発酵飼料作りに入ります。

手順はシンプルですが、いくつかのコツを押さえることで失敗を防げます。

  1. 材料を混ぜる
    おからや米ぬかを先に入れてダマを潰しながら混ぜます。ダマが大きいと腐敗の原因になるため、できるだけ小さくしましょう。
  2. 水分量を確認
    全体を混ぜたら手で握り、固まりにならずに崩れる状態がベストです。水分が多い場合は粉類を追加し、少ない場合は水を加えます。
  3. 山型にして保温
    混ぜ終わった飼料は山型にまとめ、むしろや布で覆って保温します。量が少ない場合は発酵が進みにくいので、しっかり保温するのがポイントです。
  4. 温度管理
    翌日には中心部が温かくなり、発酵が進んでいる証拠です。理想的な発酵温度は40~60℃。60℃近くまで上がると発酵のピークとなり、鶏の餌としてベストな状態になります。
  5. 毎日の攪拌(かくはん)
    発酵中は毎日かき混ぜて空気を入れ、好気性(こうきせい:酸素を必要とする)発酵を促します。これにより腐敗を防ぎ、均一な発酵が進みます。

発酵飼料の利用・保存・管理方法

発酵が始まった飼料はすぐに利用できます。

鶏が食べきれる量を餌入れに入れ、残った分は鶏舎の床に撒くのもおすすめです。

鶏は本来、地面を掘って発酵した有機物を食べる習性があるため、自然な行動を促せます。

保存のポイントは以下の通りです。

  • 早めに使い切る
    発酵飼料は作りすぎると保存期間が長くなり、腐敗や発酵の進みすぎによる品質低下が起こります。適量をこまめに作るのが管理のコツです。
  • 毎日の攪拌と材料の追加
    材料をつぎ足しながら毎日攪拌することで、発酵状態を維持できます。つぎ足しをしない場合は、発酵後なるべく早く使い切りましょう。
  • 水分量の管理
    水分が多すぎると腐敗しやすくなるため、適度な水分量を保つことが重要です。

発酵飼料のメリットと失敗しないためのポイント

発酵飼料には多くのメリットがあります。

  • 鶏の健康維持
    発酵により消化吸収が良くなり、腸内環境が整います。腸内フローラ(腸内細菌叢)が豊かになることで、病気に強い鶏に育ちます。
  • 卵や肉の品質向上
    栄養バランスが良くなり、卵の黄身が濃くなる、肉質が良くなるなどの効果が期待できます。
  • 地域資源の有効活用
    米ぬかやおからなど、地域で余りがちな食材を有効活用でき、廃棄物の削減にも貢献します。
  • コスト削減
    市販飼料に比べてコストを抑えられるため、持続可能な養鶏が可能です。

失敗しないためのポイントは、ダマを小さくすること、水分量を適切に保つこと、毎日の攪拌を欠かさないこと、作りすぎないことです。

腐敗臭がした場合は、水分過多や攪拌不足が原因のことが多いので注意しましょう。

発酵飼料の応用と最新トレンド

発酵飼料の新たな可能性

近年、発酵飼料は鶏だけでなく、豚や牛、魚類の飼育にも応用が広がっています。

また、発酵過程で乳酸菌や酵母菌など有用な微生物が増えることで、家畜の免疫力向上や糞尿の臭い軽減にも役立つと報告されています。

さらに、発酵飼料は地産地消型の持続可能な農業(サステナブルアグリカルチャー)を実現するうえで注目されています。

地域の未利用資源を活用し、環境負荷を抑えつつ高品質な畜産物を生み出す取り組みは、今後ますます重要性を増していくでしょう。

まとめ

発酵飼料は、鶏の健康と卵・肉の品質向上、コスト削減、地域資源の有効活用など多くのメリットを持つ自家製飼料です。

材料選びや配合、水分管理、毎日の攪拌といった基本を押さえれば、初心者でも手軽に始められます。

発酵飼料作りを通じて、持続可能で健康的な養鶏ライフを実現しましょう。

ぜひ一度、身近な材料で発酵飼料作りにチャレンジしてみてください。