食料価格の高騰や健康志向の高まりを背景に、「自宅の畑で主食をまかなえないか」という声が増えています。

実際、米がなくても、根菜・豆類・擬穀(ぎこく)※1 を育てれば十分にエネルギーを確保できます。

本記事では、1㎡あたりの推定収量や栄養価など“数字”を交えつつ、家庭菜園でチャレンジしやすい作物をピックアップしました。

※1【擬穀】キヌアやアマランサスなど、イネ科ではないが穀物のように利用できる植物。

「主食」の条件とは何か

  • エネルギー源:100 gあたり炭水化物15 g以上
  • 栽培ハードル:家庭菜園(10〜20㎡)で年間2か月以上収穫を楽しめる
  • 保存性:常温保存で2週間以上もつ、または乾燥貯蔵が可能

これら3条件を満たせば、白米のように“腹を満たす”だけでなく、非常時の備蓄源としても機能します。

カテゴリー別おすすめ作物

根菜・塊茎――「掘って食べる主食」

作物収量目安(1㎡)炭水化物量※2筆者のひと言
サツマイモ3〜5 kg55 g/100 g乾甘味のおかげで子ども受け抜群。“焼き芋冷凍”は保存技として最強
ジャガイモ5〜7 kg17 g/100 g生春と秋の二期作でリスク分散。種イモは病気フリーを選ぶべき
サトイモ4〜6 kg13 g/100 g生半日陰OKで庭の隅を活かせる。粘質で腹持ちが良い

※2 炭水化物量は文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より。

根菜の強みは「調理多様性」と「放置耐性」。

サツマイモは高温乾燥に強く、猛暑でも収量が落ちにくい。

一方ジャガイモは涼しい気候を好むため、家庭菜園なら春作+秋作でリスクヘッジが基本戦略です。

擬穀類――「畑でミニ穀物革命」

作物収量目安(1㎡)炭水化物量(乾)栽培ワンポイント
キヌア0.5〜0.8 kg57 g霜に弱いので4月上旬播種が安全圏
アマランサス0.6〜1.0 kg60 g暑さに強く、真夏でも徒長しにくい
ソバ0.7〜1.2 kg71 g70日で収穫可能な“短期決戦型”。乾燥に注意

擬穀類は「小面積で高栄養」の代表格。

とくにアマランサスは必須アミノ酸がバランス良く、たんぱく質含有率は玄米の約2倍。

雑穀ご飯に10 %ほどブレンドするだけで栄養価が跳ね上がります。

豆類――「炭水化物+たんぱく質の二刀流」

作物収量目安(1㎡・乾豆)炭水化物量料理の幅
ヒヨコマメ1.0〜1.5 kg61 gカレー、フムス、サラダ
インゲン(乾)0.8〜1.2 kg60 g煮豆、スープ
レンズマメ0.9〜1.4 kg60 g煮込み、サラダ

豆類のメリットは「窒素固定」。根粒菌が空気中の窒素を取り込み、畑の肥料代を削減できます。

炭水化物と同時に植物性たんぱく質も補給できるため、“完全食”に一歩近づくジャンルです。

とうもろこし系――「粒で・粉で・蒸して」

作物収量目安(1㎡)炭水化物量コスパ
スイートコーン2〜3本(約1.5 kg)19 g/100 g生収穫後30分で甘味激減。即調理必須
フリントコーン1.2〜1.8 kg乾粒75 g/100 g乾粉に挽けば“自家製トルティーヤ”が可能

粉用コーンは脱穀・乾燥・製粉という手間がネックですが、コーンブレッドやポレンタなど主食アレンジは無限大。

家庭用の小型製粉機(約1万円)を導入する価値はあると感じます。

栽培計画の立て方

  1. 区画分割がカギ:根菜は深さ、豆と擬穀は日当たり、コーンは風媒花――性質が異なるので畑をブロック分けして同時進行。
  2. 収穫カレンダー:たとえば春ジャガ(6月収穫)→空いた畑にソバ(7月播種・9月収穫)で年間二毛作が可能。
  3. 保存インフラ:乾燥棚と遮光できる収納箱を用意すれば、虫害リスクを最小化できます。

まとめ

  • 根菜は放置栽培で高カロリー、擬穀は小面積高栄養、豆類はたんぱく質も取れる“万能選手”。
  • 年間を通じてリレー栽培すれば、10㎡の菜園でも1日200 kcal相当の主食をまかなうことが現実的に可能。
  • 自給率を高めつつ、食卓のバリエーションも豊かに――“お米なし生活”は思ったより身近です。

スーパーで10 kgの米が8,000円を超える今、家庭菜園は“趣味”から“戦略的インフラ”へ進化しました。

まずはサツマイモと豆1種から始め、余裕が出たら擬穀に手を広げる――それが無理なく続く黄金ルートだと考えます。