自分で鶏を飼う――それは「食の自給自足」という魅力的な夢のようでありながら、現実は想像以上にシビアなものです。

特に自然豊かな地域では、獣害(※注:野生動物による被害)との戦いが避けて通れません。

私自身も3年前、一度その洗礼を受けました。

可愛がっていた烏骨鶏(うこっけい)たちが、全滅したのです。

獣害の恐ろしさと、自分の備えの甘さを痛感しました。

今回、再び鶏を飼うことを決意し、心を鬼にして「守るための鶏小屋」づくりに着手。その奮闘の記録をお届けします。

かつての失敗と、そこから得た教訓

3年前、私は10羽の烏骨鶏を飼っていました。

烏骨鶏と建設中のニワトリ小屋

知人から譲り受け、育て始めて3ヶ月ほど経ったころのこと。

ある朝、小屋を見に行くと、無残な光景が広がっていました。

――鶏が姿を消していたのです。

夜、狐が鶏小屋付近を歩いているのを見た人がいました。犯人はおそらくその狐でしょう。

後日、ご近所さんの飼っていた鶏も同じような被害に遭っていたことが判明しました。
「田舎ならではのリスク」では済ませられません。

あれからずっと、悔しさと無力感が心の奥に残っていました。

【再出発】リニューアルの基本方針は「防御力MAX」

再び鶏を迎えるにあたって、最重要課題はただひとつ。

「絶対に獣に破らせない鶏小屋」を作ること。

そこで考えたのが、“3重構造”による物理バリアです。防獣対策の基本に立ち返り、今回は以下のような設計にしました。

【設計のポイント①】3重のネットで横からの侵入をシャットアウト

今回採用したのは、以下の素材による三重の壁です。

  1. 粗い目のネット(鉄製、5X10cmほどの格子)
  2. 細かい目のネット(鉄製、2cm以下)
  3. ご近所さんから譲り受けた、漁網のような布製ネット

この三重構造によって、
「かじって破る」も「手を差し込む」も「擦り抜ける」も、あらゆる侵入手段を遮断します。

漁網の素材は、まさに“ご近所の知恵”。

地元の先輩方のアドバイスは、ネット検索より信頼できるリアルな知見です。

住民がいなくなったニワトリ小屋は草刈りもせず放置していたので、まずは掃除から

粗目と細い目の鉄ネットを重ねる

屋根との隙間もしっかりネットでガードします

外側には漁網似たいなネットを張り、3重構造にしました。

【設計のポイント②】地面も抜かりなし!掘っても無駄な網敷き構造

地面からの侵入、実はこれも非常に多いルートです。

そこで今回は、鶏舎内の床全体に「目の細かい鉄網」を敷設

その上から土を戻すことで、外観は自然のままですが、地中にはしっかり“鉄の盾”を敷いています。

掘って侵入するタイプの獣(アナグマやイタチなど)への対策も、これで万全です。

【設計のポイント③】出入口もロック&強化

鶏小屋のドアも今回はしっかりと設置しました。
以前は網だけの簡易的な開閉口でしたが、今回は金属製のヒンジ(蝶番)+針金ロック付きドアを採用。
夜間の侵入リスクを抑えると同時に、人間の出入りも楽になりました。

【素材へのこだわり】廃材の再利用と「素人大工」の味

今回のリニューアルに使った木材は、すべて廃材です。

地元の工務店や解体現場から出た木材を譲っていただき、それを再利用しました。

資源の有効活用であると同時に、材料費ゼロという大きなメリットもあります。

もちろん、私自身は大工仕事の素人。

水平が取れていない箇所もあり、見た目は不格好かもしれません。

でも、それでもいいと思っています。大事なのは「機能性」と「気持ち」ですから。

なぜ今、自家養鶏なのか?

いま、再び自家養鶏を始めようと思ったのには、いくつか理由があります。

  • 食の安心安全への関心が高まっていること
  • 卵の価格高騰
  • 生き物とのふれあいによる癒し効果

特に3番目。

都会の暮らしでは得られない「命の重み」を感じる日々は、心の栄養になります。
そしてそれは、鶏たちを「守る」ことにも直結しているのです。

【まとめ】飼うなら、最後まで責任を。だからこその“防獣DIY”

今回の鶏小屋づくりを通して、改めて思ったのは――

「飼うからには、守るまでが責任」ということ。

外敵から命を守るためのDIYは、見た目の良し悪しではなく、どれだけ“本気”かで決まる。

そしてその“本気”を支えるのは、失敗から学び、地域の知恵を取り入れ、手間を惜しまない姿勢なのだと実感しています。

写真を交えて今後の運用状況もレポート予定ですので、興味のある方はぜひまた読みにきてくださいね。

自家養鶏、リスクはあるけれど、喜びもまた大きい。

だからこそ、しっかり備えて、心から楽しみたいと思います。